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絵を通して、チャレンジしている強さんの気迫を感じ、励まされます。

経済ジャーナリスト 荻原 博子 さん

経済ジャーナリスト 荻原 博子 さん

仕事で忙しかったり、いろいろなことがうまくいかずに寂しいときなどに、 このネコの絵を見ていると勇気がわいてきます。 絵を通して、チャレンジしている強さんの気迫を感じ、励まされるからなのかもしれません。(荻原先生談)

本日はテレビや本、雑誌でお馴染みの経済ジャーナリスト・荻原博子先生にお話を伺う為、ご自宅をお訪ねしました。( 聞き手 顧 定珍)


 

顧:鈴木強先生とは、かなり以前からのご縁だそうですが、出会われた頃の印象をお聞かせください。

荻原:強さんとはもう40年くらいのお付き合いです。宴会仲間ですね。(笑)

強さんが二十歳くらいのときに私の妹とのつながりがあって、よく家に遊びに来ていたんです。彼はその頃からクレー※1の絵が好きで、「笑い」というのはその頃からのテーマでしたね。絵はどんどんうまくなっているのでしょうけれども、本質的なものは変わらないですから、それが本当に彼の描きたいものなんでしょうね。

家では強さんを囲んで宴会をいつもやっているのですが、強さんはクスッと笑わせるのが大好きで、必ず人を笑わせる。澤田さん※2、亡くなってしまいましたが、コンビでいつも遊びに来たり、又、彼女を連れて遊びに来たりと、最初の頃と印象は変わらないですね。

顧:若い頃に演劇をしていた鈴木先生にとって澤田さんは「笑い」の師匠であり、またクレーからは「温かい笑い」、「受容」を表現する上で大きく影響を受けたと私も伺いました。
「笑うネコ」の絵のどんなところがお好きですか?

荻原:このネコの絵は他の絵と少し違う感じで、強さんの違う面を見るようでいいなと思いました。心の中では笑っているのでしょうけれども、おすましなネコで。

顧:ずっと飾っていて何か感じるものはありますか?

荻原:強さんの絵は観ているとクスッと笑ってしまうのです。だから、気持ちを和ませてくれますよね。強さんの人柄が出ているのではないでしょうか。

顧:荻原先生は沢山執筆されるので、ふと気持ちを和ませてくれるのは嬉しいですよね。

荻原:本を読んだり映画を観たりすることはあっても、芸術的な人間ではなくて普通なので、芸術に関してはよくわからないのですが、強さんの絵にはとても温かさを感じます。そして彼をよく知っているので、強さんと言っただけで笑ってしまう。

本当に険のない人ですが、一度とても怒ったことがあります。彼が二十歳頃だと思いますが、私が強さんをからかったんだと思います。冗談は受け流してくれるけれど、からかわれたら怒る。本当は、とてもプライトが高い人なのだということを、その時感じました。

「笑うネコ」の絵に魅かれたのは、やさしく笑わせてくれるだけの強さんではなく、満月を背景に凛として笑みをたたえながら、プライドと言うか気品を持って何かに挑むネコ。その姿に、魅かれたのかもしれません。そして、それは画伯としての強さんの、私が知らない一面なのでしょう。
仕事で忙しかったり、いろいろなことがうまくいかずに寂しいときなどに、このネコの絵を見ていると勇気がわいてきます。絵を通して、チャレンジしている強さんの気迫を感じ、励まされるからなのかもしれません。

顧:作品を通じて、作家とつながっているんですね。
鈴木先生に期待することなどございますか?

荻原:彼は偉いと思う。だって全然ブレないんだもの。私の期待というよりも、「このまま大往生して下さい」と言いたいですね。(笑)クスッと笑いながら。堂々と、老翁になって。
彼は絵を描いているから、自分がとても解放されているのでしょうね。だから、普通の人は生活のことでいろいろ悩んだりしていますが、彼は絵にすべて集約していますよね。
私が彼の言葉で好きな言葉は、「時間持ち」ということです。お金持ちっていうじゃないですか。彼は「俺は時間持ち」って言うんです。「時間持ち」って、今はとても豊かな言葉ですよね。彼は自分の自由な時間をたくさん持っていて、それで制作活動ができる。それが「時間持ち」。ですから、今は「お金持ち」よりも「時間持ち」の方が贅沢なのかもしれない。そういう意味で彼はいい人生を送っている。うらやましいと思います。

普通は、結婚もせずに猫と生活をしていると聞くと寂しいかなと思うのですが、たぶん彼は寂しくないのでしょう。絵があるから。そして、恋愛も沢山しているから寂しくない。笑わせる秘訣を知っているから、若い子にモテますしね。(笑)しかも、私は40年間彼を知っていますが、40年間変わっていないというのは凄いことですね。二十代の頃、彼のヘアスタイルはマッシュルームでしたけど、外見は変わっても中身は変わっていないわよね、たぶん。宴会などの時にはすぐ二十年前に戻りますよね。でも最近は個展などで彼は忙しくて、なかなか会えないですけれどね。

顧:絵の根底にある「笑い」には、喜劇やクレーの抽象画、「時間持ち」という言葉に表れている自由と孤独など様々なものが含まれているのですね。本日はご多用の中お時間を割いていただき、本当にありがとうございました。

※1 パウル・クレー 1879年スイスで生まれドイツで活躍した20世紀を代表する画家
※2 多摩美日本画卒、のちに澤田アート工房として額縁を制作。昨年6月に早世された澤田治孝氏

ギャラリー通信#79(2015年3月) インタビュー記事より